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第819話 疑惑 14-2

 それとも無差別ないたずらみたいなものなのか。二度目の歩道橋も正直よくわからない。僕と間宮が行き先を決めたのはほんの数分前のことだったし、あの歩道橋を必ず渡るかどうかはわからなかったはずだ。だとしたらこれも無差別?  しかし二日も続けて災難に見舞われるのも偶然にしては出来すぎている。でも自分が誰かから恨みを買うようなことに覚えがない。やはり考え過ぎですべて偶発的なことなのだろうか。現になにごともなくひと月も経てば、身体の青あざや手首の腫れも引いてなんとなく記憶からも薄れ始める。 「なにか考えごと?」 「え?」  ソファに座っていた僕を藤堂が少し心配げな表情をして覗き込む。いつの間にか藤堂の手にはマグカップも握られていて、しばらく自分がぼんやりしていたことに気づく。横に並ぶように腰かけた藤堂は僕をじっと見つめている。その視線に少し考えるように目を伏せた。  怪我の原因はともかく、写真のことだけでも明良が言うように話しておいたほうがいいだろうか。 「話したくないことだったら無理に話さなくてもいいですよ」 「あ、いや、そういうわけではない。ちょっと待ってて」  優しく微笑んだ藤堂の表情に僕は慌てて首を振った。考え過ぎるのは僕の悪い癖かもしれない。これ以上は藤堂に心配をかけるのも申し訳ないと、僕は立ち上がり自室に足を向ける。  初めて届いた写真は気味が悪くてシュレッダーにかけて捨ててしまったけれど、そのあとに届いたものはなにかの証拠になるのではないかと保管していた。棚の奥にしまっていた化粧箱を取り出す。 「これなんだけど、なんだと思う?」  写真を収めた箱を手にリビングに戻ると、藤堂は不思議そうな顔をして首を傾げる。けれどその表情は僕が箱のフタを開けた途端に曇ってしまう。眉間にしわが寄り、少し険しい顔をした藤堂はじっと箱の中身を見つめた。

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