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第825話 疑惑 15-4

 不安にさせていることがたまらなくもどかしくて、掴んでいた手に指先を絡ませ繋ぎ合わせる。強く握りしめて藤堂の瞳を見上げたら、それはほんの少し潤むように揺れた。 「僕は傍にいる、ずっといるから」 「佐樹さん、あなたを守りたい。あなたを傷つけたくない。だからどうか、俺のことを離さないでいてください」 「うん」  もう二度と離れたくない。そんな想いを伝えたくて、繋ぎ合わせた手を引き寄せ指先に口づけた。いつも藤堂がしてくれるみたいに、そっと優しく唇で触れる。少しでも伝わればいいと藤堂を見つめたら、どこか安堵したような笑みを浮かべて髪を梳いて撫でてくれた。 「藤堂、好きだ。お前が好きだよ。僕にはお前だけだ」 「その言葉だけでも幸せです。けどいまはもっと佐樹さんが欲しい。このままさらってもいい?」  髪を梳き頬を撫でる手にまた心臓の音が緩やかに加速していく。いまは甘やかなこの空間に飲み込まれてしまいたい。そんな気持ちが胸に広がり、僕は小さく頷いた。そして両腕を伸ばして藤堂の首元に絡めれば、背中を抱き寄せる藤堂に軽々と身体を抱きかかえられた。  肩口に頬を寄せて目を閉じたら、藤堂のすべてが感じられるような不思議な錯覚に陥った。ゆるやかな鼓動、肌を通して伝わる熱。なにもかもが愛おしくてたまらない気持ちになる。もっと触れて、もっと見つめて、そんな独占的な想いが心を埋めて、目の前にいる藤堂しか映らなくなった。 「佐樹さん、愛してるよ」 「うん、僕もだ」  柔らかなベッドの上で重なり合う。その身体に感じる少しの重みさえ胸を高鳴らせる。それがひどく幸せで、これ以上の幸せなんてもうないと思えた。  傷跡を辿るように触れる唇に吐息が漏れて、しがみ付くように背中に腕を伸ばす。きつく抱きしめても藤堂はずっと優しい笑みを浮かべていた。それがなんだかとても嬉しかった。

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