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第828話 疑惑 16-3

 放課後を迎えると、僕は用事を早く済ませてしまおうと生徒会室へ足を向けた。顔を出すのは創立祭が終わって以来で、おそらく五ヶ月ぶりくらいだ。新生徒会になってからはもちろん初めてで、少しばかり緊張のような背筋が伸びるような不思議な気持ちになった。けれどそんな気持ちは生徒会室の戸をノックし、聞こえた返事と共に室内へ足を踏み入れた瞬間に消し飛んだ。 「ニッシー久しぶりぃ」  のんびりとした野上の声は予想できたし、その姿があることにもなんの疑念も浮かばない。けれど生徒会長の椅子に座っているはずの野上は、長机に備え付けられたパイプ椅子に腰かけており、会長の椅子にはさも当たり前のような顔をした峰岸が座っていた。 「あら、西岡先生」  そしてもう一人、なんの違和感もなく珈琲ポットを片手に鳥羽が振り返った。春の頃とほとんど変わりのないその光景に、僕は思わず立ち止まったまま目を瞬かせてしまう。 「お前たちなにしてるんだ」  しばらく固まってしまっていた僕の口から、ようやく言葉が紡ぎだされる。新生徒会になった様子を見にいこうと僕はやってきたはずなのに、この違和感がありそうでまったくない状況に遭遇して、ありきたりな言葉しか思い浮かばなかった。 「ようセンセ、今日はどうした?」  堂々とした佇まいで椅子に腰かけている峰岸が立ち尽くしている僕に声をかける。  小さく首を傾げ目を細める峰岸の仕草に、創立祭の準備をしていた頃にタイムスリップしたような錯覚を起こしてしまいそうだった。 「いや、どうしたじゃないだろ。なに我が物顔でくつろいでいるんだよ」

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