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第829話 疑惑 16-4
慌てて頭を軽く振ると、僕は現実を思い返した。この場に峰岸と鳥羽がいることはおかしいのだと、思い直して僕は室内に視線を向ける。しかしそこにいたのは見覚えのある顔だけで、新しく生徒会に入った生徒はいないようだった。
いま生徒会室にいるのは、なぜか当たり前の顔をしてそこにいる峰岸と鳥羽、前職書記から昇格して新しく生徒会長になった二年の野上。そして生徒会補佐からこちらも昇格して副会長なった一年の柏木だ。このメンバーだけを見ていると本当に頭が混乱しそうになるが、このほかにも書記と会計が二人ずついるはずだ。
「そう堅いこと言うなよ」
「いや、僕は普通のことを言っている」
なんとなく峰岸と言い合うと堂々巡りになりそうな予感がして、僕はため息をついて開いた戸を閉めると野上のもとへ足を進めた。
「ニッシーありがと! あれ? この書類って飯田のじゃない?」
手にしていた封筒を渡すと野上は中を覗いたまま首を傾げた。
「ああ、頼まれた」
そしていま頼まれた意味がなんとなくわかった。飯田はあまり峰岸と接するのが得意ではないので、この状況を想定して逃げたのだ。生徒に振り回されてどうすると言いたいところだが、相手が峰岸では仕方がないかと僕は肩をすくめた。
「そういえば文化祭、張り切ってるみたいだな」
ふと飯田の話を思いだし僕は峰岸と鳥羽を交互に見つめる。すると二人ではなく野上のほうから声が上がった。
「聞いてよニッシー! この二人ってば職権乱用なんだよ」
「職権乱用?」
「人聞きの悪いこと言うな、平等なのは変わらないぜ」
泣きつくように僕にしがみついた野上の背中をなだめるように叩いてやると、峰岸が至極楽しげな声で笑った。ちらりと峰岸と鳥羽を振り返れば、二人はなにやら含みのある笑みを浮かべている。またなにか悪知恵でも働いているのだろうか。考えが読み切れないこの二人の笑みに冷や汗が出た。
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