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第834話 疑惑 18-1
僕の危機管理能力はいつまでたっても甘いと評価を受ける。しかしそれのどれもが予想外過ぎて僕は本当にわからないのだ。
だから目の前でにこにこと笑みを浮かべながら肉を頬張っている、そんな間宮のどこに気をつけたらいいのかがわからない。間宮が学校に赴任してきてからもう三年は過ぎた。そのあいだも特に変わらず同僚として接してきている。気を許すなというのはどこまでのことを指すのだろう。
「西岡先生、お肉こげちゃいますよ」
「あ、うん」
裏っ返しにされて、ほどよく網の上で焼けた肉に視線を落とした僕は、それを皿に移すと黙々と口に運ぶ。すると間宮はせっせと新しい肉を網に載せていく。この甲斐甲斐しいところも昔から変わっていないし、僕に懐いて後ろをついて歩くのも赴任以来ずっとだ。
「私の顔になにかついてますか?」
「あ、いやそんなことはない!」
気づいたら間宮の顔を僕はじっと凝視していた。慌てて首を振ったら間宮は眼鏡の奥にある瞳を瞬かせ、不思議そうに首を傾げる。
しかし長いこと一緒に仕事をしているが知らないことは多い。特に僕と間宮はあまり相手の深いところまでは立ち入らないタイプなので、自然と知る情報も限られてくる。考えてみれば間宮のことは仕事場の姿しか知らない。プライベートなことで知っているのは、生徒会にいる柏木の叔父であることぐらいだ。普段の間宮はどんなことをしてるのだろう。
「間宮の趣味ってなんだ?」
「え? 急な質問ですね。うーん、読書とかが一番自分の時間が持てていいですね」
「お前は勉強とか好きそうだよな」
そういえば間宮は大学院へ進んだのに退学して教師になったのだった。なにやら難しい薬学かなにかを研究していたとか、前に聞いたことがあったような気がする。それにしてもそんなに楽な仕事でもないのに、どうして教師になどなったのだろう。
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