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第836話 疑惑 18-3
「そういえば西岡先生は最近とても健康的になりましたね」
「健康的?」
「食事を自ら進んでしているようですし、顔色もよくて元気そうです」
「そうか?」
いままで大して気にしてはいなかったけれど、そんなに僕は不健康そうだったのだろうか。まあ、いまと以前を比べると格段の差だが、そこまで違うものだろうかと思わず首を傾げてしまう。
「不思議そうにされてますけど、一時期とても痩せられて皆さん心配してましたよ」
「え、そうなのか?」
確かに事故のあとは食事も喉を通らなくて、ズボンのウエストがだいぶゆるくなった覚えはある。それから食事は適当になったけれど、ある程度痩せてからはそれほど変わっていないと思っていたが、心配されるほどだったのか。最近は少し肉付きがよくなってきたのは気づいていた。しかし無駄に肉がつくような、太ったという感じではないのは藤堂の食事のおかげだろうか。
「うーん、色々と心配かけたのは確かだよな」
「それだけ西岡先生が周りに愛されてる証拠ですけどね。西岡先生が笑っていると皆さん和やかになりますよね」
「え? そんなことないだろ」
前にも誰かに似たようなことを言われた気がするが、そこまで自分が周りに影響を与えているとは思わなかった。けれど毎日顔を合わせていれば自然と空気というものは伝わるのかもしれない。気分が塞いでいた頃はあまり生徒たちも近づいてこなかった気がする。
誰かに与える影響は少なからずあるのだろう。
「私が休んでいるあいだに随分とみんな変わっていたので、ちょっと寂しいですけど」
「あ、あー、そうかな」
少し目を伏せて拗ねたような表情を浮かべる間宮にうまい言葉が浮かばない。つい誤魔化すように目が泳いでしまった。しかし春は色んなことが凝縮されていて、目まぐるしい季節だった。
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