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第837話 疑惑 18-4

 藤堂に告白されていままでにない恋をして、ずっと忘れていた過去を思い出した。みのりのことも清算できて、それがなによりも僕の気持ちを変化させた気がする。  それに片平や三島、峰岸や生徒会の生徒たちとも触れて賑やかさにもまた慣れた。 「そういえば文化祭もうすぐだから、生徒会もなにかと忙しいだろう」 「あ、はい。色々と手続きが多いのでなかなか大変です。毎年のこととは言えこの忙しさには慣れないですね」  困ったように笑って肩をすくめたが、間宮もなんだかんだと生徒会の顧問をして二年が過ぎた。最初の頃はひやひやしたものだが、いまはさすがに慣れたのか堂に入ったもので、仕事は的確で処理スピードも速い。もともとコツコツと仕事をこなすタイプだから僕にはそれほど驚きはないが、顧問になりたての頃はほかの先生たちが気を揉んでいた。間宮はすごく真面目だけれど、たまに突然予想がつかないこともするからだ。  とはいえ物事には限度がある。三月の送別会の時、なぜあんなにも酔っ払うほど飲んだのだろう。階段から飛び降りたのは、酔っ払った勢いからだろうというのはなんとなく見ていてわかったけれど、それまではあそこまでお酒でハメを外すというのはなかった気がする。 「なにか不満とか、溜まってることはないか」 「不満ですか? うーん、特にこれといっては」 「大丈夫か? お前は知らぬ間に色んなこと溜め込んでいそうで心配だ」  僕の問いかけに頭を悩ませている間宮を見てますます心配になってしまう。普段どんな話をしていても、間宮の口から愚痴というものがこぼれたことがない。聞いている側からすると嫌な気分になることもなくていいのだが、なにか聞いてやったほうがよかったのではないかという気持ちにもなる。とはいえそんな余裕は藤堂に出会う前の僕にはなかったから、未然に間宮の事故は防ぎようもなかった。改めて考えると僕はひどく頼りにならない先輩だ。

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