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第838話 疑惑 19-1

 基本的に間宮は大人しい。もうちょっとこう押しが強くてもいいくらいだと思うが、いつも困ったように笑い自分の発言をあまりしない。だからほかの先生たちはそんな間宮にあれやこれやと用事を押しつけてしまうのだ。  けれどそのことで愚痴をこぼすかと思いきや、自分が至らないばかりにとしょげている。僕もそれほど自己主張は激しくないが、間宮はお人好しの典型だなと思う。いや、でも最近は少しばかり我が強くなったかな? ふいに夏の部活動の帰り際を思い出した。 「西岡先生に心配してもらえるなんて嬉しいです」 「心配してるのに、喜んでどうするんだよ」 「あ、すみません」  頬を緩めて笑う間宮に少しばかり呆れつつも、僕もつられて笑みが浮かんでしまった。心配になることは多いが、この間宮が持つのんびりとした空気感は嫌いではない。一緒にいると肩肘を張らなくていいから気が楽なのだ。 「あまり見られると照れるんですが」 「照れるなよ」  本当に顔を赤らめて俯く間宮を見て思わず声を上げて笑ってしまう。からかうように顔を覗き込んだら、ますます真っ赤になってうろたえる。結構間宮は恥ずかしがり屋だ。いつもなに気なく顔を見つめれば、すぐに照れたように視線をそらす。 「お前ってほんと目線合わせるの苦手だよな」 「は、恥ずかしいじゃないですか」 「なんだよそんなうぶなこと言って。好きな子を前にしたら置物になりそうだな」 「ドキドキしてそれどころじゃないです。私はあまり恋愛ごとに向いていないので」 「なんだそれ、可愛いなお前」  そわそわと落ち着きなく視線をさ迷わせる間宮は、急に早送りしたみたいに動き出す。少し滑稽なその反応に、申し訳ないと思いつつも涙が出るほど笑ってしまった。やっぱり間宮は和み系だな。いままで周りにあまりいなかったタイプのような気がする。

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