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第839話 疑惑 19-2

 思えば僕の身近にいる人は自己主張もできる自立した人間が多い。間宮のように手を伸ばしてやろうと思える相手はほとんどいなかった。 「間宮は、なんかいいな」 「え?」 「一緒にいて楽しいよ」 「あ、ありがとうございます」  嬉しそうに笑う間宮を見ていたらなんだか癒やされた気分になった。無邪気って言葉がぴったりな男だと思う。  それからしばらくたわいない話をして、食事を終えて店を出た頃には二十時を回っていた。肉や野菜をたらふく食べてもう満足だ。久々にがっつりと肉を食べた気がする。 「西岡先生の細い身体のどこにあの肉が消えたのか不思議です」 「そうか? 食べた分は腹が出てるけど」  満腹の腹をさすっていると、間宮がその腹を見つめて意外そうな顔で目を瞬かせた。しかしスーツのジャケットを着た状態ではあまりわからないかもしれないけれど、見た目以上に胃が膨れている。普段それほど大食らいではないが、最近は胃腸の調子もいいのでこのくらいで胃もたれすることはない。 「間宮は一見細そうだけど、そうでもないんだよな。結構しっかりしてる。本の虫のわりに運動もしてる?」 「え? ちょっ、西岡先生?」  身長は僕より少し高いくらいで、一見した感じは色も白いし顔も小さいからほっそりとした印象を受ける。けれど実際は適度に筋肉がついている健康的な身体だ。薄着になると意外と胸板も厚くて男らしい。僕は食べても運動しても筋肉があまりつかないので、ちょっとばかり羨ましくなる。 「逃げるなよ」  ぺたぺたと僕が触れるのがくすぐったいのか、思いきり身をよじって逃げられた。さらには一歩後ろに下がられてしまう。ちょっと不満げに視線を上げたら、間宮は困ったように眉をハの字にして顔を赤く染める。

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