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第842話 疑惑 20-1
目の前にいる相手を信じていたいと僕は思う。でもだからといって人からの助言をまるきり無視することもできない。そんな人と人のあいだで頭を悩ませたことはこれまでも何度もあった。今回もまさにそんな状況なのだが、それをお前の長所であり短所だな、と笑ってくれたのはいつも傍で僕を見ていた親友の明良だった。そんな明良から突然、「あれからどうよ?」――と電話をもらって僕は電話口で少しばかり考えてしまった。そして悩んでからようやくその言葉の意味を飲み込んだ。
「忙しくて忘れてたけど、大丈夫だ」
しばらく間が空いた僕に、電話口の向こうにいる明良は長いため息を吐き出した。
「おいおい、のんきだな。なにか身の回りで変わったことないか」
「うーん、特にない」
呆れはしているが心配してくれているのも、なんとなく声で気がつく。しかし最近は差出人不明の小包が届いていないのだ。それがいつからだったか思い返してみると、ここ二週間くらいはまったく音沙汰がない。週一から週二くらいの間隔で送られてきていたのに、ぱたりと来なくなった。もちろん身に危険が及ぶようなこともないので、明良にこうして電話をもらうまで忘れていたくらいだ。
「一応、長いこと放って置いたから心配してたんだけどな」
「悪かったな、気にかけてもらってたのに」
基本的に恋人が優先の明良だが友達甲斐がないわけではない。どんな時でも気にかけてくれているので、いざという時に頼りになる男だ。
「ほんとになにも身の回りで変わったことないか?」
「うーん、このところ忙しくて特に気になることはなかったな」
「忙しいって学校か?」
「ああ、文化祭が今週末にあるんだけど、生徒会の補佐に入って毎日帰りも遅いし忙しい」
なにかあるごとに飯田が僕に生徒会行きの書類を渡すものだから、周りの先生たちもそれに便乗するようになって、いつの間にか間宮の補佐役にされてしまった。
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