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第843話 疑惑 20-2

 とはいえ毎日のように文化祭の準備で居残る生徒たちを管理したり、出店するクラスの調整をしたりで生徒会は目が回るほどに忙しい。だから人手はいくらあってもいいくらいなのだが、うまい具合に押しつけられた感がある。  なんだかんだと生徒会には峰岸と鳥羽がいる。関係者以外は入り浸りは禁止だと言ってしまえばいいものを、言えずにいるのは二人の存在感と発言力だろうか。退任したあとも二人の影響力は生徒にも教師にも大きいので、強くは出られないという微妙な構図が出来上がっている。 「文化祭か、久しぶりに顔を出すかな」 「え、いいよ来なくて」  思わず素っ気ない突き放す言い方になってしまった。とはいえ未成年に粉をかけるような節操なしではないが、明良は生徒のほうが放っておかないくらいの色男でもある。友人だとバレたら僕が女子生徒たちに絡まれそうだ。一般公開日はそれでなくとも忙しいのに面倒はごめんだ。 「そう言うなよ。お前の身の回りも気になるしな」 「え?」 「灯台下暗し、案外身近にいるかもしれないだろ、お前のストーカー」 「ス、ストーカー? 明良までそんな風に思ってるのか」  思わぬ単語に声が上擦ってしまった。以前、藤堂にも言われたがそれは僕にとってまったくピンと来ない言葉だ。 「彼氏絡みであることも拭えないけど、お前につきまとってるやつがいるのは事実だろ」 「確かに、そうだけど」 「それに外のやつでも出入りできる文化祭も気をつけたほうがいいんじゃないか」 「んー、まあ」  どうしていつも明良の言葉はまっすぐで淀みがないのだろう。それが正解のような気がして思わず頷いてしまいたくなる。優柔不断で言葉を濁してしまうことも多い僕だから、こういうところは昔から羨ましいなと思う。

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