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第845話 疑惑 20-4
僕からの連絡がないだけで一晩眠れなくなってしまうくらいだ。もし僕になにかあったら、そんなことを考えてすごく不安になってしまう。
「心配かけたくないなら、なんでも言葉にしろ。佐樹は自己完結するところがあるから、それは改めたほうがいい」
「あー、うん。そうだよな」
「そうそう、お前は自分で思っているよりも倍くらい言葉にしても足りねぇくらいだ」
僕はとっさに重要なことを隠してしまうところがある。それは心配かけまいとする気持ちや保身だろう。でもそれは身に染みついた癖のようなもので、なかなか改めるのが難しかったりもする。だけど藤堂のことを思えば、意識して話すようにしなければいけないなとも思う。
「けどあんまり気にし過ぎても自意識過剰になりそうだしな」
何度も念押しをされてから切れた電話を見つめ、思わずため息をついてしまう。どこまで気にしたらいいのだろうか。色々と助言をもらうけれど、それのどれもがすとんと胸の中に落ちてこない。危機感がやはり欠如しているのだろうか。けれど普通に生活していたら気になどしないようなことばかりだ。なんだか最近は思いもよらぬことばかりでめまぐるし過ぎる。
考えることがたくさんあり過ぎて少しばかりキャパオーバーだ。
「なんだか今年に入って周りが色々と変化し過ぎだな」
色んなことがここ半年くらいにぎゅっと詰め込まれている感じで、驚くほどあっという間に時間が過ぎている。春に告白されたのがもうずっと前のような気さえしてくるほどだ。
「このまま、もうなにも起きずに過ごせたらいいのに」
腰かけていたベッドにごろりと横になると、携帯電話を手放し左手を宙にかざした。そして僕は薬指で光るシルバーリングを見つめる。
藤堂が卒業をして一緒にいられるようになることがなによりの望みだ。藤堂が笑っていてくれればいい。それ以外は欲張らない。だからこのまま時間が過ぎて欲しいそう願うばかりだ。
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