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第848話 疑惑 21-3

「西岡先生、最近は生徒会に関わること多いね」 「ああ、そうだな」 「ねぇ先生、写真一緒に撮ろうよ」  至極楽しげな笑顔を浮かべてデジタルカメラを取り出した生徒に、僕はこのあと何度となく足を止められた。カメラで生徒たちを撮ってあげたり、みんなと一緒に写真を撮ったり、ただ見回るはずが賑やかな中に巻き込まれて、ちょっとだけ祭りを満喫した気分になってしまう。  去年までは裏方で電話番や事務処理などをしていたから、こうして文化祭の表舞台を見るのは久しぶりだ。 「僕もカメラ持ってくればよかったな」  学校で契約したカメラマンは回って歩いてくれているだろうが、みんなの無邪気ではつらつとした笑顔は自分の手で写し撮りたい気分にさせられた。 「さて、この階は問題ないから下の階に行くか。あ、利用の少ない教室や階段はたむろしている生徒がいないか確認、だっけ」  使っている教室と未使用の教室がある場所では格段にひと気の有無は違う。ここ最近は問題行動など起きていないが、祭りに浮かれてうっかりなにかをやらかす生徒がでないとも限らない。念には念を入れてというわけだ。  賑やかな声を背にすると、僕は未使用の教室を見て回ることにした。 「こういう誰もいないところでサボりたくなるのはわかるな」  賑やかな分だけ喧騒から離れた静けさが恋しくなるのはなんとなくわかる。静寂の中から賑やかな風景を見下ろすのもそれはそれで楽しいものだ。  少しばかり感慨深くなりながら教室を見回していると、ポケットの携帯電話が震えた。生徒会用の携帯電話は首から提げているので、鳴っているのは自分のプライベート用だ。短い着信だったのでメールだろう。 「明良かな」  顔を出すと言っていたし着いたのだろうとメールを開くと、案の定それは明良からだった。

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