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第854話 疑惑 23-1

 明確な殺意がそこにあるのかもしれない。そう思うと急に不安が大きくなる。偶然だったのではないかという考えは、あまりにも安易だった。でもそこまでする意図はいまだにわからない。怪我を負わせるだけが目的だとしても、なぜそこまでするのか。 「でもよくわからないな。写真のほうもなにか意味があってきてないのか、たまたまなのかもわからないし」 「だな、けど事故とそれをやってる犯人は同一な気がするな」  紙コップを傾けコーラを喉に流し込みながら、明良はなにか考えるように目を細めた。そんな横顔をじっと見つめて僕はこれまでのことを考えてみる。しかしなにか共通点のようなものがないか、そう考えてみるけれど思い浮かぶものがない。  そもそもなにかが検討つくような状況だったら、こんなに悩むこともないだろう。そんな状態でいくら考えたって答えは見つからない。 「同一犯か」 「けど心当たりはねぇって顔だな」 「ああ、見当もつかない」 「だよな。こんな中途半端な状況じゃ、ほとんど警察もあてにならないし」  考えれば考えるほどにわからなくなる。見えない向こうにいる相手の真意。けれど確実になにかが近づいている、それは間違いない。怖い、そう思うけれど、いまなにをするべきなのか、どうするべきなのか。それすら想像もできない。 「彼氏のほうはどうなんだ?」 「うん、藤堂の話ではお母さんは夏に調子を崩してからずっと家に引きこもってるらしい。ほとんど外にも出ている様子はないって言ってた」 「ふぅん、そうなのか」 「一番怪しいと感じるけど、こういう細かいことができるとは考えにくいよな」 「まあ、そうだな」  すべてが他人の手によるものだとしても、それを計画するだけの余裕がある状態には思えない。

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