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第857話 疑惑 23-4
ほかの先生たちも巡回しているとはいえ、まだほとんど見て回れていない気がする。最後のほうに休憩を回してもらって通話を終えると、それを見計らっていた明良は「またな」と片手を上げて去っていった。
「とはいえさっきの子がまたなにかしてくるとは考えられないし、いますぐことが起こるとも考えにくいよな」
しかし先ほどの子と明良の言う視線の人物は一緒なのだろうか。それとも別? 別なのだとしたら、僕に関わってくる人物はほかにもいると言うことになる。そうするとあんまり気を抜いてもいられない。けれど一日に何度も襲ってくるようなこともない気がする。これは下手をすれば警察案件だ。
「とりあえずあまりひと気のないところに立ち入らないようにしよう」
今日みたいな日は人の目が多いから人混みの中のほうがまだマシだろう。いままでの三件、どれも表立って事件を起こそうという大胆さは感じられない。なるべく見知った顔と一緒にいるようにしたら、無闇に近づいてくることもないはずだ。
「とはいえ、気をつけるに越したことはないか。それよりも、そろそろ真面目に仕事しよう」
気になることは尽きないけれどぼんやり立ち止まっているわけにもいかない。藤堂には心配をかけてしまうことになるが、またちゃんと話をしてみよう。考えるのはそれからだ。
「そういえば藤堂たちのところどんな様子だろう」
出し物は確か教室で飲食だから喫茶とかそういうのだろう。ほかのクラスでもありそうな出し物だが、優勝を狙っているということはなにか趣向を凝らしているはずだ。藤堂はあまりきて欲しくなさそうだったが、興味が大いにある。まずはそこに行ってみようと、僕は好奇心を抑えきれないまま少しばかり浮かれた気分で足を踏み出した。
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