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第864話 疑惑 25-3

「それでなくとも最近は身の回りが物騒だしな」  藤堂に会えるのは嬉しいけれどまた心配をかけてしまうなと、思わず額を抑えてため息をついてしまった。早く原因が究明できるといいのだが、まったく手がかりがないのが現状だ。早く気がかりがなくなって、もっとゆっくり一緒に過ごせるようになるといいのに。 「ニッシー?」 「え? あ、野上」  考え込んでいるうちに廊下で立ち止まっていたようだ。後ろから背中を叩かれて、僕は顔を跳ね上げて振り返った。 「どーしたの? 難しい顔して」  振り返った先では新しく生徒会長になった野上が不思議そうな顔をして立っていた。キャラメル色の髪が首を傾げた方向にさらりと揺れる。 「いや、ちょっと考えごとしていただけだ」 「ニッシーって考えごとするといつも置物みたいだよねぇ」  僕の言葉に野上は吹き出すようにして笑った。その反応に思わずムッと顔をしかめたら、ますます野上は肩を揺らし腹を抱えて笑い出す。 「ごめんごめん、怒った?」 「怒ってはない。本当のことだし」  この集中すると周りが見えなくなる僕の癖は、生徒会などではよく知るところになっている。毎回ぼんやりしてしまう僕をみんなが楽しげに笑う。創立祭準備の頃は峰岸にいつもからかわれていた。 「それにしても真面目に会長やってるな」  話題を変えようと野上をじっと見つめる。就任前は制服も着崩され、話し方も相まってどこかゆるっとした雰囲気だった。けれどいまの野上はきちりとネクタイを締め、身なりは整えられている。そして以前に比べたら間延びした話し方も少し控えめになったように感じた。 「みーくんが有能だから助かってるよ」 「ああ、柏木か。一年だけど先生たちの信頼も厚いし、副会長は適任だったよな」

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