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第865話 疑惑 25-4
「うん、ほんとみーくん様々だよ。なんでもできるんだもん」
そういえば野上と柏木は創立祭の頃に、関係をこじらせていた気がする。あれからどうしたのだろう。あの手の問題は容易く解決するのは難しい。少し前に見かけた柏木は随分と大人しくなってしまった印象さえあった。
「じゃあ、柏木との仲違いは落ち着いたのか?」
「……うーん、みーくんと俺のは仲違いってわけじゃないんだよね。あれだな、俺がちゃんと理解するのに時間がかかっただけなんだよねぇ」
「そうか。理解した上で答えは出たのか?」
誰かが誰かを好きになる――それはとても簡単な法則だけれど、野上に与えられた方程式は彼にとっては少しばかり難しいものだ。そう簡単には整理がつくものではないのだろう。少し考え込むように俯いた野上の横顔は真剣味を帯びていた。
「うーん、そうだな。俺もまだはっきり答えが出ていないから、みーくんにはちょっとだけ時間をもらうことにしたんだ」
「まあ、焦って答えを出すようなことでもないしな。野上のまっすぐな気持ち、柏木に伝えてやるといいさ」
もしかしたら未来はほんの少し明るいのかもしれない。野上の言葉からは前向きに考えているようにも感じられた。いまはまだすんなりと受け入れられる状況ではないのかもしれないが、もしも気持ちが傾くことがあったら、そう思うと自分のことのように胸がドキドキとする。
どんな恋愛でもまっすぐに見つめ合うことは必要なのだと改めて思った。僕も藤堂にまっすぐ向き合えているだろうか。この先もすれ違いや喧嘩もするかもしれない。そんな時、目の前にいる大事な人の手を離さず握っていられるだろうか。そんなことを思いながら、僕は野上の頭を優しく撫でた。
いつでも彼らはまっすぐで忘れそうになることを思い出させてくれる。
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