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第866話 疑惑 26-1
なんだか早く藤堂に会って二人の時間を過ごしたいなと思った。しかし文化祭は十五時半までで、片付けもあるから終わるのは夕方になるだろう。それに生徒より僕たち教師のほうが終わるのが遅いことが予想できるので、まだあと数時間は会えそうにない。だいぶ待ち遠しい気分になってしまった。
「そういえば、今日のマミちゃんは口を開けば一言目にニッシーだったよ」
「え? そうなのか?」
「うん、ほんとにマミちゃんはニッシーが好きだよねぇ」
あははと楽しげに笑う野上の言葉に、僕は思わず驚いてしまう。あまりにも仕事をサボり過ぎただろうか。間宮も意外と心配性だな。しかし怪我の一件もなにやら随分と心配をかけたようだし、あとで謝っておいたほうがいいかもしれない。
「俺は生徒会室に戻るけどニッシーは?」
「少し校内を見回ってから戻るよ」
「わかった。じゃあ俺行くねぇ」
手を振り去っていく野上の背中を見送って、そのあとはしっかりと見回りの仕事に戻った。午前中から賑わっていたが、お昼を過ぎるとまたさらに人が増えて、どの教室も来場者でいっぱいだった。それに秋晴れで天気もよく、外で出店している生徒たちも忙しそうにしていた。
「例年以上の盛り上がりですね」
「確かに今年は来客数が多いなぁ」
ひと通り見回りを済ませて職員室に顔を出すと、ほかの先生たちが数人集まっていた。
毎年賑わいを見せる文化祭だったが、今年は本当に人が多いと思う。多めに刷ったはずパンフレットがほとんど残らず捌けている。やはりこれは賞金の力なのだろうか。そう思うとなんだか即物的だが、あながち間違いでもない。
みんな終了後には投票の結果が出るのを首を長くして待っていることだろう。しかし結果は明日の祝日を挟んだ三日後だ。いまは楽しかった思い出のほうを存分に味わってもらいたい。
「あ、西岡先生。大丈夫でしたか?」
「え?」
僕が職員室に入ってきたのに気がついたのか、先生の一人がこちらを向いた。そして僕はそれと共に投げかけられた言葉に首を傾げてしまう。
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