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第868話 疑惑 26-3

「なんで」  なぜこんなものがここにあるのだろう。僕の心の中は疑問と不安でいっぱいになる。  写真に写っているのは僕――そして藤堂だ。いつ撮られたものかはわからないが、おそらくマンションの近くで、買い物帰りだろう。二人は私服で手を繋ぎ笑い合っていた。  誰がこんなものを、そう思ってからすぐに僕を殴り逃げ去っていった制服姿の人物を思い出した。今日はたくさんの人が校内に出入りしている。しかし職員室の中は簡単に一般客が出入りはできないだろう。怪しまれずに入ることができるとしたら、生徒くらいのものだ。 「けど誰なんだ」  これは急に来なくなった写真と関わりがあるのだろうか。そうなると校内に関係者がいるのか。いやしかしそう考えるのは早計過ぎる。考えたくはないがやはり第三者に金を握らせている可能性もある。  駄目だ、いまいくら考えても答えは見つかりそうにない。一旦これは持ち帰ろう。考えるのはまた藤堂から話を聞いてからでも遅くはないだろう。握りしめていた写真を素早く封筒に戻すと、僕はそれを机の足元においていた鞄の中にしまいこんだ。 「わっ!」  そしてほっと息をついたのと同時か、上着の内ポケットに入れていた携帯電話が震える。突然の振動に驚いて飛び上がった僕は、慌てて携帯電話を取り出した。  ――気になることがあるから終わったらうちに来い。  それは明良からのメールだった。恋人を迎えに行くからとそそくさ帰ったのに、一体どうしたのだろうか。不思議に思い返信をしてみれば、持ち帰った仕事があるからと相手の送り迎えをしただけで家に帰ったようだ。それにしても気になることとはなんだろうか。  藤堂が家に来るからと断りを入れたいところだが、明良の話もすごく気になる。しばらく悩んでメールか電話では駄目だろうかとまた返信する。するとすぐさま――確かめたいことがあるから来い、と返ってきた。

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