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第870話 疑惑 27-1
清掃点検などの作業が終わったのは日が暮れ始めた頃だった。生徒たちを早々に下校させて、一段落したあとは生徒会のメンバーも早めに帰宅させた。最後に校内に残ったのは教師陣のみだ。そして時間が過ぎていくと、みんな終わったあとの打ち上げに気持ちが向き始めているのか、終わりが近づくほどにやたらと処理スピードが速くなった。
明日は早急な案件や特別なことがない限り、学校には来なくていいことになっている。僕たち教師は年中無休に近いところがあるので、確実な休みはありがたいものだ。みんなが少しばかり浮ついた気分になるのも仕方がないかと思った。
「西岡先生は行かないの?」
何人かの先生たちにそう声をかけられたが、用事があるからと丁重にお断りさせてもらった。できれば早く明良のところへ行って用件を済ませてしまいたい。それは時間が遅くならなければ、藤堂にも会えるかもしれないという打算的な考えがあるからだけれど。
「あ、来月は忘年会参加してくださいね」
「わかりました。それじゃあ、お疲れ様です」
休み明けの連絡事項などを話し合いようやく解散になると、僕は急いで職員室をあとにした。そして腕時計に視線を落として時間を確認する。いまから急げば学校前から出ているバスに間に合いそうだ。
「西岡先生!」
「ん?」
靴を履き替えて外に出ようとした僕を呼び止める声がした。その声に振り向くと、廊下の少し先から間宮が小走りで駆けてくる。
「途中まで一緒に帰りませんか」
「ん、まあ、いいけど。ちょっと急がないとバスが行ってしまうぞ」
「そうなんですね。急ぎましょう」
扉を押し開けた状態で待っていると、間宮は慌ただしく靴を履き替えて顔を上げる。「お待たせしました」という声に頷くと、僕は外へと足を踏み出した。そして足早に校庭を抜けて、バス停へ急いで向かう。
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