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第871話 疑惑 27-2
これからやってくるバスを逃すと十分以上は待たなくてはならない。駅まで歩いて行けない距離ではないが、三十分以上かかるので先を急いでいるいまは時間がもったいない。
「今日はどこか行かれるんですか?」
無事にバスの乗って一息ついていると、間宮が小さく首を傾げてこちらを見る。
「ああ、うん、ちょっと友達のところに行く予定があって」
「そうなんですか、電車はいつものと同じですか?」
「同じだけど逆方向だな」
明良の住むマンションがある場所は僕の最寄り駅とは逆方向に乗って五つ先の駅で降りる。藤堂の最寄り駅の一つ手前だ。だから早く終わったら会えないだろうかという邪な考えが浮かんでしまうのだ。
「間宮もどこか行くのか?」
思わずにやけてしまいそうになった顔を引き締めて、意識をそらすように別の話題にすり替える。そういえば先ほど用事があるようなことを言っていた。どこかに行くのだろうかと問い返せば、同じように逆方向の電車に乗るようだ。ただし間宮は僕は向かう駅のさらに三つ先の駅に用事があるようで、途中で別れることになるらしい。
「今年の文化祭は例年よりも盛り上がりがすごかったですね」
「ほんとだよな。みんなのやる気がすごかった。賞金はどのクラスに渡るんだろうな」
「多分峰岸くんたちのクラスで間違いないんじゃないですかね。途中経過ではダントツだったみたいですよ」
「やっぱりそうなのか。確かにあれは驚いた。完成度がすごかったもんな」
あれから一通り出店や展示、ライブや舞台、色んなものをみたが、あのクラスは客入りも評判も抜きん出ていた。歩いているだけで噂話を何度も聞いたくらいだ。特に峰岸の話はよく聞いた。雑誌を見た子が結構集まっていたのだと思う。もちろん藤堂もかなり噂の的にはなっていたが、峰岸ほどは騒がれていなかった。おそらく社交性の問題だろう。まあ、クールなのがまたいいという子も少なくはなかったが。
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