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第872話 疑惑 27-3
「でもあんな大金なにに使うんだろうな」
「ああ、みんなで打ち上げするのに使って終わりにするみたいですよ」
「打ち上げ? そっか、一クラス三十五人前後いるから、二クラスで一人当たり千円にも満たない計算か。そう考えるとそうでもないって感じがするな」
「金額自体はかなり高い気がしますけど、全員で使うとなると案外そんなもんか、って感じですよね」
そういう計算がもとよりできていたからこその計画だったと言うことか。相変わらず細かいところまで抜かりないな。なんだかこの先も峰岸と鳥羽には敵いそうにない気がした。頭の回転や洞察力、行動力がずば抜けている。
「でも無事に終わってようやくひと安心だな。今年もあと二ヶ月切ってるし、冬休みまですぐな気がする」
「そう考えると一年早いですね」
「確かに」
それからしばらく間宮と二人で文化祭の出来事や今後の話などしつつ、一緒にバスから電車に乗り継いだ。
「今日はお疲れ様でした」
「ああ、間宮もお疲れ様」
電車で十五分ちょっと揺られると、僕の目的の駅に到着した。このさらに先へ用がある間宮とは、ここで別れることになる。軽く間宮に挨拶をして僕は開いた扉を足早に抜けた。そして改札に向かうべく階段を駆け上がった。
「佐樹」
「あれ? 明良、珍しいな迎えに来てくれるなんて」
改札を抜けながら携帯電話を開こうとした僕を、聞き覚えのある声が呼び止めた。その声に顔を上げると、改札から少し離れたところに明良が立っていた。その姿に驚きながらも足早に駆け寄れば、「よく来たな」と頭を撫でられる。どういう風の吹き回しだろう。明良のマンションまでは徒歩で十五分かからないくらいの距離だ。わざわざ迎えに来るなんて珍しいこともあるものだ。
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