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第874話 疑惑 28-1
明良の家に来るのはかなり久しぶりだ。今年の初め頃に明良がこのマンションを購入して、引越しの手伝いをしに来た時以来かもしれない。あの時はまだ荷物があってそれほど感じなかったが、ここはなかなか広い部屋だと思う。一人暮らしだがファミリータイプの二LDK。玄関から繋がる廊下を抜けた先にリビングダイニングがあり、一面が大きな窓で日中とても明るくて、冬でも随分と暖かかったと記憶している。
「夜なのにカーテン閉めないのか」
廊下とリビングを仕切る扉を抜け部屋に入ると、大きな窓にカーテンは引かれておらず、ぼんやりとした外の明るさが窓の向こうに見えた。
「この辺は建物が低いし、気にするな」
「お前、もっと気にしろよ」
「鍵は閉めてるから大丈夫だ」
肩をすくめてリビングのローテーブルにコンビニで買ってきたものを置くと、明良は中から缶ビールを取り出しそれを開けた。そして三口、四口ほど缶を傾けるとそれを飲み干してしまう。相変わらず酒の飲み方が水のようだ。そんな様子を眺めつつ僕も買い物袋に手を伸ばし、一緒に買ってもらったお茶のペットボトルを取り出した。そしてテーブルの傍に腰を下ろしてペットボトルの蓋を捻った。
「それで確かめたいことってなんだ」
「んー、それな」
なんだかはっきりとしない曖昧な返事をしながら、今度は煙草に火をつけると明良はリビングの窓を開けた。もう十一月に入ったので、さすがに夜は肌寒い。ひんやりとした風が吹き込んできて、思わず身を縮めるように膝を抱えてしまった。
寒いと文句を言いそうになったが、普段から明良は家の中では吸わないのだろう。ベランダに置かれたサンダルを足に突っかけながら外に出ていった。普段見ている限り明良はヘビースモーカーと言うほどではないが、少し煙草の本数は多いほうだと思う。ヤニや臭いを気にしているのだろうか。
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