876 / 1096

第876話 疑惑 28-3

「いまここで確認しておきたいことがあんだよ。俺の気のせいだったならそれで納得する」 「けど確認するって」 「電話してくれればいま確認できる」  真剣な明良の表情に言葉が詰まってしまう。その表情を見れば冗談やいい加減な考えで言っているわけではないことはすぐにわかる。そもそも明良がそんなことをする人間ではないのはよくわかっているつもりだ。けれど思い浮かべる相手もそんなことをするやつではないと思えてならない。しかし電話一本で解決するならば、ここは明良の言葉に従ったほうがいいだろう。 「わかったよ」 「よし、じゃあとりあえずこれから会えないかどうか聞いてみろ。とにかく俺がいいって言うまで電話切るなよ」 「う、うん。わかった」  少し勢いに気圧されるように携帯電話を取り出すと、僕は電話をかけることにした。向こうも用事があると言っていたし、これから会うなんてできないだろう。うまく誤魔化して電話を切ればいい。そう思いながら電話帳にある番号を表示し、通話ボタンを押した。 「絶対切るなよ」 「え? 明良どこに」  携帯電話を耳に押し当てた僕をよそに、明良は急に立ち上がると部屋を出ていこうとする。どういうことかと聞きたくても耳元では呼び出し音が鳴り始めた。そして慌てる僕をおいて明良は部屋を出ていくどころか、玄関を過ぎて出ていってしまった。取り残された僕はと言えば、頭が混乱していた。 「もしもし」  一人で慌てふためいているうちに電話が繋がってしまった。耳元から聞こえてきた声に思わず驚いて飛び上がってしまう。 「あ、もしもし」  いざ電話が繋がると余計に頭が混乱する。しかしここで電話を切るわけにもいかないので、僕はひたすらに話のきっかけを考えた。

ともだちにシェアしよう!