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第879話 疑惑 29-2

「に、西岡先生が、久しぶりに会ったら、随分、その変わっていたので」 「え?」 「だから、色々と気になってしまって」 「は? どういう意味だ? それって今日が初めてじゃないってことか?」  嫌な予感がして問いかけてみれば、間宮の視線が明後日の方向に流れた。どういうことだこれは、間宮が復帰したのは七月になる前だ。それからずっと僕は気がつかなかったというのか。まさか藤堂のことまで知っていたりするのだろうか。 「まさかと思うが、写真はお前じゃないよな?」 「え? しゃ、写真? なんのことですか」 「お前はどこまで知ってるんだよ、この封筒見覚えないのか!」  テーブルに置いてあった封筒を手にとって目の前に突き出すと、間宮はしばらく固まったように封筒を見つめてから大きく顔を左右に振った。反応がわかりにくい。両手で胸元を掴みあげたら間宮は慌てて身を引こうとした。 「わ、私が知っているのは、と、藤堂くんのことだけです」 「……」  それだけ知っていれば十分だ。十分過ぎるほどの衝撃だ。藤堂のことを知っている人物はこれで何人目だろう。まったく隠せていない気がしてきた。再び僕は床に手をついて俯いてしまった。 「あんた佐樹のことつけ回してなにが目的だよ」  うな垂れた僕の頭をまた撫でた明良はため息交じりに言葉を吐いた。ダメージを受けた僕の代弁をしてくれるつもりなのだろう。 「わ、私は西岡先生になにかしようとかそんな気持ちはありません。今回は先生が変わった理由が知りたくて思い余ってしまって。ただ、その、似ているんです。それでずっと前から気になっていて」 「似てる?」  僕が誰かに似ているというのか。間宮の言葉に顔を上げると、気恥ずかしそうに頬を染めて俯いている。しばらくその様子を見ていたら、間宮は懐に手を差し込みなにかを取り出した。 「私の、妻です」 「……妻? お前結婚してたのか!」  おずおずと差し出されたのは二つ折りの定期入れだった。

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