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第880話 疑惑 29-3
妻という単語に驚きながら視線をそれに落とすと、間宮の指先がそれを開いた。
「え?」
似ているといってもたかが知れていると思った。けれどそこに現れた写真は僕と明良を絶句させるには十分の代物だった。間宮と肩を並べて写っているその人を見た瞬間、僕は自分の目をこすってしまった。
髪は肩ほどまであり胸元の膨らみが見て取れる。しかしその違いがなければ、僕は自分の写真を見せられているかのような錯覚に陥っていただろう。
「まあ、確かに似てるっちゃ似てるけど、結婚してるくせに佐樹をつけ回すとか、理由になんねぇよな」
確かにそうだ。定期に写真を入れ、照れくさそうにするくらいに奥さんを想っているのならば、わざわざ僕を気にして追いかけ回す必要はない。
間宮の行動は少し不可解だ。
「間宮って言うのは奥さんの姓か。甥の柏木と苗字が違うなとは思ってたけど。ってことはまだ離婚したとかいうわけじゃないよな」
生徒会にいる一年の柏木と間宮は叔父と甥の関係だった。柏木の父親が間宮の兄なのだ。一緒に暮らしていると聞いていたので、先入観から違和感が発揮されていなかった。しかし結婚していて婿入りもしているのに実家暮らしだとわかると、なんだかものすごく違和感がある。
はっきりしないこの状況を、間宮はなんとなく言いにくそうにしている。しかしこのままでは納得がいかないので、口を割らせることにした。
「つ、妻とは四年前に結婚したのですが。結婚してから少し様子がおかしくて、問いただそうと思った矢先に家を出てしまって」
ぽつりぽつりと言葉を選びながら話す間宮を見て、ものすごく深いため息が出てしまった。酔っ払って羽目を外したのは、それまであった奥さんとの連絡がぷっつり切れたからのようだ。
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