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第894話 疑惑 33-1

 公園の中は月明かりや外灯の明かりがあるものの薄暗さを感じた。そして思った以上に道がわかれ入り組んでいる。佐樹さんを連れ去ったと思われる人間たちがどんな相手なのかはわからないが、普通に考えてこういう場合はなるべく人が立ち入らないような暗がりを選ぶだろう。道を間違えないよう注意深く辺りに視線を向けながら奥へと足を進めていく。  些細な物音も聞き逃さないようにと神経を研ぎ澄ませば、奥まった茂みから微かに声が聞こえたような気がした。それに気づいて足を速めると、少し先の草むらが葉擦れの音を立てて大きく動いたように見える。  しばらく様子を見ていると、人影が草むらから飛び出した。少しよろめきながら道に飛び出してきたその人は、数歩足を踏み出しもつれるようにその場に崩れ落ちた。外灯に照らされた背中は身体を丸めるようにしてうずくまっている。そしてそのあとを追うようにゆっくりと草むらから出てきた三つの影がその背中を取り囲む。  外灯に照らし出された三つの人影は二十代後半から四十代前半くらいの男たちだ。一番年若そうな金髪の男、それより幾分年がいっていそうな細身の男と一番年上だろう眼鏡をかけた黒髪の男。若い男は別にしても、残りの二人は見るからに醸し出す雰囲気が常人離れしていた。 「佐樹さん?」  どうするべきか少し逡巡してしまったが、俺はゆっくりと足を進めた。うずくまる人の顔は暗くてよく見えなかったけれど、背格好から見ても佐樹さんである可能性が高い。脚を忍ばせて近寄ると、俺はうずくまる背中に足をかけた金髪の男の襟首を掴み、勢いよく引き倒した。背後への警戒がまったくなかった男は、勢いのまま一メートルほど後方で足をもつれさせ尻餅をつく。 「なんだお前」  すぐに目の前の人を助け起こそうと思ったが、それより先に細身の男がこちらを振り返った。その男は眼光が鋭く、一般人には到底思えない人相をしていた。

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