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第895話 疑惑 33-2
睨みつけるように目を細めた男はこちらに手を伸ばす。それを避けて後ろに下がると、背後で起き上がった金髪の男が俺の首に腕を回した。
締め上げる勢いで力を強くする男の腕を掴むがさすがにビクともしない。ギリギリと締め上げられて、このままではさすがにまずいと思った。とっさに俺は足を上げて背後のすねを蹴りつける。そして緩んだ腕を振りほどき、今度は身体を捻って相手の脇腹に肘を思い切り叩き込んだ。うめき声を上げて金髪の男は後ずさる。
「あんまり舐めた真似するなよクソガキ」
脇腹を抑えてしゃがみこんだ金髪の男から俺は数歩離れた。けれど目の前から近づいてくる細身の男は苛立たしげに舌打ちすると、再びこちらへと手を伸ばしてくる。その手から逃れるように身を引くが、うずくまっていた人が顔を上げたのに気がつき足を止めた。
「藤、堂?」
「佐樹さん!」
ゆっくりと振り返ったその人は、ぼんやりとした視線でこちらを見る。顔を上げたのは間違いなく彼だった。ようやく見つけたその姿に少し緊張が緩んだ。しかし身体を起こした彼が外灯に照らされた瞬間、俺は息を飲む。頬が赤く腫れ、口の端が切れて血が滲んでいた。それに右腕の肘から手首にかけてスーツが赤黒く変色している。
それがなんなのか、気づくと同時に身体が動いていた。けれど彼のもとに駆け出そうとした俺の身体は、目の前にいた男に容易く押し留められてしまう。身体をよじって手を振り払おうとするが、腕を掴まれた。
「放せ!」
「あんまり好き勝手してくれるなよガキが」
今度はさすがに金髪男のように簡単にあしらえそうにない。手に込められた力の強さに思わず顔をしかめてしまう。
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