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第905話 別離 2-4

 けれどそうすると藤堂は自分を責めてひどく傷ついてしまうんじゃないだろうか。迂闊にも僕も怪我をしてしまったし、それだけでもきっと藤堂は胸を痛めるに違いない。 「いまはあんまり考えるな」 「ああ」  僕の心の内を察した明良になだめられながら、またしばらく静かな時間を過ごした。そうしてどのくらい過ぎただろう、ようやく手術中を知らせるランプが消えた。 「藤堂」  どうやら手術は無事に終わったようだ。手術室から出てきた藤堂の姿を見て身体の力が抜けそうになった。胸に溜まった不安が吐き出した息と共に流れ出ていく。  術後の詳細は聞けなかったけれど、面会については経過を見るので数日は時間が空くと教えてもらった。しかしこのまま帰る気にもなれず、いま少しだけでもいいから顔を見ていきたいと申し出たら、関係者と言うことで今回だけ特別に数分だけならと了承を得た。まだ意識がはっきりしていなくうつらうつらとしている状態のようだ。長居はしないようにと念を押されて、僕は案内された病室へと入った。 「……よかった。お前にもしものことがあったらって思ったら、息の根が止まってしまいそうだった」  横顔はまだ青白いけれど、ゆっくりとした呼吸音が聞こえる。本当に無事でよかった。いまは無機質に心音を告げる機械の音にさえ安堵してしまう。ちゃんと生きてる、それだけのことが嬉しくて、ずっとこらえていたものがこぼれ落ちた。次から次へと溢れるものを拭いながら、僕は眠る藤堂の横顔をじっと見つめ続けた。  これからのことを考えると少し気が重くなるけれど、いまは藤堂が無事に回復することだけ考えよう。彼の隣にいると決めた時から覚悟は決めていた。もしもの時に僕が選ぶ答えはたった一つだけだ。それ以外は考えないでいよう、そう僕は心に誓った。

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