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第911話 別離 4-2
「あ、佐樹さん」
そのメールはいままさに連絡を取りたいと思っていた彼からだった。どうやら病院に問い合わせて見舞いができる日取りを聞いたようだ。四日後にはこちらに来ると書いてある。俺としてはすぐにでも会いたい気分だが、多分彼のことだからその日が一番早い日程なのだろう。まだ一応は術後経過の観察中になるのか。しかしあと四日とは随分先なような気がする。
「電話したいな」
会えないならせめて声が聞きたい。充電は残りわずかしかないけれど、気がつけば俺は彼の電話番号をダイヤルしていた。今日は祝日で、教師陣も休みなのだと言っていた気がする。いまは家にいるだろうか。
受話口を耳元に当てるとコール音が響く。一度、二度と響く音を聞いていたら三度目が鳴る前にそれが途切れた。
「藤堂!」
「佐樹さん」
「よかった。さっき病院に問い合わせて目が覚めたことは聞いたんだけど、よかった。本当にいま安心した」
電話口に出た彼の声はいつもより早口で、珍しくどこか落ち着きのない雰囲気だった。その声を聞くとどれだけ心配をかけていたか、それがよくわかる。何度もよかったと繰り返す彼をできるならば抱きしめてあげたいと思った。
「心配をかけてすみません」
「いや、元はと言えば僕のせいでもあるから、こっちこそごめん」
「謝らないでください。発端はきっと俺のせいです」
「やっぱり、お母さんが関わっているのか?」
どこまで話したらいいのだろう。あまり深い話をして佐樹さんをこれ以上巻き込むわけにもいかない。あいつが離婚に頷いたのだから、川端がこれ以上彼になにかをするとも考えにくいが、なにもしないと決まったわけではない。
「詳しくは話せないんですけど、ことの発端はあの女で間違いないです」
「そうなのか。でもお前が悪いわけじゃないよ」
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