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第927話 別離 8-2
なんだか僕の気持ちばかりが空回っていきそうで、あまり深く考えたくないとも思ってしまう。
もっと藤堂が僕を頼ってくれたらいいのに、そうしたら僕は全力で受け止めてあげるのに。それさえさせてくれない。それがひどくもどかしくて、僕まで思い詰めそうになる。
「時雨さんもよくお見舞いには来ているんですか?」
「週に二度くらいでしょうか。でも私の場合はあまり顔を出し過ぎても嫌われそうで」
「もっと顔を見せたほうが慣れるかもしれませんよ。それに気分転換ですよね」
見舞いに行くのを躊躇っているようだけれど、なんだかとても寂しそうだ。本当はもっと甥の顔を見に行きたいのかもしれない。でも会ったことのない親戚が突然訊ねてきたら、戸惑って警戒してしまうのも仕方ない。時間が解決してくれればいいなと思う。
「日本にはいつまでいられるんですか?」
「そうですね、仕事が順調に行けばあとひと月ほどでしょうか」
「ひと月ですか、甥っ子くんはそれまでに馴染んでくれるといいですね」
「ええ、そうですね。そう願っています」
僕の言葉に照れたように笑った時雨さんの表情から、甥へと向ける愛情が見て取れた。自分の子供が可愛いのはもちろんだけど、血の繋がった兄弟の子供も同じくらいに愛おしく思うものなのだろうか。残念ながら僕にはまだ甥も姪もいないので、その気持ちをいま知ることはできない。しかし早く姉夫婦に子供ができたらいいのになと思うほどに興味が湧いた。
「子供が可愛いだなんてそんなに思ったことはなかったのですが、いざ目にすると駄目ですね」
「ああ、そういうものなんでしょうね。特に兄弟の子供は無条件で可愛がれてしまうところもありますし」
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