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第937話 別離 10-4
「また、改めて伺います」
言葉が見つからず俯く僕にこれ以上聞いても無駄と判断したのか、野崎さんは両膝に手を当て頭を下げると勢いよく立ち上がった。それにつられて顔を上げれば、野崎さんはどこか心配げな面持ちで僕を見つめる。
「すみません、今度来ていただく時にはお話しできるようにしておきます」
「よろしくお願いします」
「はい」
いつまでもこうしてはぐらかし続けているわけにはいかない。藤堂には今度ちゃんと警察に話をすると言おう。そして藤堂ともこれからのことをちゃんと話し合おう。そのほうが早く解決することもあるかもしれない。
野崎さんと館山さんを玄関先で見送ったあと、僕は藤堂と連絡を取ろうと携帯電話を手に取った。
「電話、学校からだ」
携帯を開くと着信が一件あった。その着信を目に留めてなんとなく嫌な予感が胸をよぎった。警察が学校に行ったことで、やはりなにか疑問に思われただろうかと胸に不安が湧き上がる。けれど着信を見なかったことにするわけにもいかない。
しばらく携帯電話を見つめたまま立ち尽くしてしまったが、このままなにもかも後回しにしても解決はしないと意を決して電話をかけることにした。
「西岡ですけど。電話をいただいていて」
「あ、西岡先生お疲れ様です。ええと、ごめんなさい、いま新崎先生は席を外していて」
「そうですか」
どうやら僕に電話をしてきたのは三年の学年主任である新崎先生のようだ。藤堂の担任で直接関係がある先生だ。僕もとてもお世話になっている先生だが、いま僕に電話がかかってくる理由が見当たらない。
また折り返しで電話をかけてもらえるようお願いすると、僕は大きく息を吐き出しながら通話を切った。一体これからどんな話をされるのだろう。胸の中で膨れ上がるように不安が広がった。
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