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第938話 別離 11-1
新崎先生からの連絡を待ったが、その日に折り返しの電話はかかってこなかった。連絡があったのは翌日になり、藤堂の見舞いにでも行こうかと出かける準備をしていた時だ。話したいことがあるから学校に来て欲しいと言われた。
わざわざ呼び出されるということは、電話で済ませられる話ではないということだ。これからのことを考えると少し胸が苦しくなるが、いつまでも不安がっているわけにはいかない。それに話を聞いてみないことにはなにも始まらないし、もしかしたらまったく関係ないことかもしれない。
「いまは昼休みか」
連絡をもらった僕は早速行き先を変更して学校へと来た。久しぶりの学校は相変わらずで、昼休みということもありのんびりとした雰囲気だ。廊下で通りすがる生徒たちと挨拶を交わして僕はまっすぐと職員室へと向かった。
「ああ、西岡先生よく来てくれましたね」
職員室に着くと顔を上げた新崎先生とすぐに視線が合った。よほど僕を待っていたのか、僕の顔を見た途端に席を立ちこちらへやって来る。
「早速で悪いのですが、いいですか?」
「あ、はい。大丈夫です」
どこか少し慌てた様子の新崎先生。いつも落ち着いた雰囲気で取り乱すようなこともないのに珍しいこともあるものだ。話の内容はそれほど急を要することなのか。少し胸がざわついた。
「あの、話ってなんですか?」
職員室を出た僕たちは隣にある応接室に入った。勧められるままにソファに腰かけた僕は、目の前で同じようにソファに座った新崎先生を見つめる。すると新崎先生は一通の封筒をテーブルの上ですべらせ僕に差し出した。
「手紙、ですか?」
僕は封筒をじっと見つめ息を飲んだ。定形の大きめの茶封筒で赤い速達の文字が見て取れる。手紙の宛名は新崎先生になっていた。新崎先生に宛てたこの手紙は僕に一体なんの関わりがあるのだろうか。
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