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第940話 別離 11-3
「それで藤堂はなんて言ってたんですか?」
「辞める必要がこれから出てくるからと」
「これから?」
一体これからなにがあるというのか。藤堂の身の回りでなにが起きているのだろう。思い悩んでいることと関係があるのだろうか。わからない知らないことばかりでもどかしくて不安になる。藤堂が考えていることがわからなくて、ひどく気持ちが焦ってしまう。
紙を掴んだ自分の手が震えるのがわかる。また一人で全部背負い込もうとしているのか。藤堂にとっての僕は、いったいなんなのだろう。
「藤堂は、ほかになにか言っていませんでしたか?」
「ええ、話してくれました。そのことで西岡先生に確認したいことがあります」
「え?」
藤堂が話したことで僕に確認を取ること――ふいに思い浮かんだのは一つしかなくて、心臓が大きく跳ねる。けれどまっすぐに僕を見つめる新崎先生の真剣な眼差しから、視線を離すことはできず、息を飲んでその目を見つめ返した。すると新崎先生は手にしていた二つ折りのファイルを僕に差し出す。テーブルに置かれたファイルを手に取ると、僕はしばらくそれを見つめ動きを止めてしまった。
「今朝、校長宛てに送られてきたメールです」
新崎先生の声に背中を押されるように僕は息を詰めながらファイルを開いた。ファイルに綴じられていた紙は二枚、メールをプリントアウトしたものだ。書かれている文面を目で追い、添付された画像を目に留めると僕は大きく肩で息をした。それと共に張り詰めていたものが一緒に外へ押し出された気分だ。危惧していたことが表に現れたのに、気持ちはなぜか落ち着いていた。
書かれていた文章を要約すると、学校の男子生徒と恋愛関係を持つ僕を早急に辞職させろという内容だ。それと共に添付されているのは藤堂と写っている写真。
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