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第941話 別離 11-4

 藤堂の顔はぼやかされているが、見る人が見ればすぐにわかるだろう。肩を並べているもの、手を繋いでいるもの、二人抱きしめ合っているもの。どれも見覚えがある。僕に送られてきた写真に混じっていたものと同じだ。ということはこれを送ってきた人物は藤堂の母親の協力者か。 「これに書かれていることは事実ですか?」 「……間違いありません、事実です」  問いかけられた言葉に僕はよどみなく答えていた。新崎先生には嘘はつけない。それに新崎先生は確認と言っていた。もし藤堂から僕とのことを聞いているのなら、嘘を言ったところでそれはすぐにバレてしまうだろう。僕と新崎先生の付き合いは長い。僕が嘘がうまくないこともよくわかっているはずだ。 「相手は藤堂で間違いないですか?」 「そうです。藤堂です」  あんなに不安だったのに、言葉にしてしまえばもう恐れはなかった。隠していることを知られるのが不安だったんじゃなく、僕は黙っていることが後ろめたかったのかもしれない。  藤堂とのことは僕にとって後ろ暗いことではない。年甲斐もなく、教師でありながらと非難されたとしても、藤堂は僕にとってかけがえのない存在だ。代わりになる人なんてどこにもいない。そのことを言葉にできないことのほうが辛かったんだ。 「西岡先生、もしかしてこの仕事を辞めるつもりでいますか?」 「そうですね。もしもの時はそう考えていました」  藤堂と付き合うと決めた時にそうしようと決めていた。その時が来たらきっぱりとこの仕事を辞めようと、そう思っていた。運よく藤堂の卒業まで過ごせたらいいなと思ったりもしたけれど、明るみに出た時は無駄なあがきはしないと決めた。もしも相手が藤堂であるとバレた時に藤堂の処分が少しでも軽くなるようにしたいと思ったからだ。  だからいまがその時だというならば、僕はなんの迷いもない。

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