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第943話 別離 12-2

 しかしこれを送ってきた、もしくは送るよう指示したのが藤堂の伯父だと言うなら、藤堂の母親の協力者はその人だということになる。その人物はどういった人なんだろう。 「新崎先生は藤堂の伯父についてはなにか知っていますか?」 「川端さんはこの学校に寄付してくださっている方の一人ですよ。うちの理事長と懇意にしていると聞いたことがあります」 「学校に関わりが深いんですね」  もしも本当にその人が協力者なのだとしたら、僕の名前が事件に挙がらなかった理由がなんとなくわかる気がする。事件の原因が僕と藤堂の関係であることも伏せられているし、学校の名前が公にならないようにするためではないだろうか。多分その人は学校の不利益になることをもみ消している。  今回こうしてメールが来たのは僕を学校から排除するためか。でもなぜ藤堂の伯父がここまで介入してくるのだろう。なんだかまだわからないことばかりだ。 「もう少し、藤堂と話をしてみます。藤堂がいまなにを考えているのか、聞いてみないと」 「そうしてください。西岡先生とのことは聞かせてくれましたが、まだ口を閉ざしていることは多いと思います」 「あの、どうして藤堂は、僕とのことを話したんですか?」  僕には誰にも言わないでくれと言っていたのに、どうして新崎先生に話してしまったんだろう。藤堂は簡単に秘密を漏らしてしまうような男じゃない。それなのに、どうして。 「それは、私が気づいていたからです」 「え?」 「あなたたちのあいだにあるものが、単純な師弟愛ではないと私が気づいていたから、言葉にしてしまったんでしょう。秘密を抱えると言うことは苦しいものです。吐き出すように私が彼をつついたんですよ」  やっぱり僕はなに一つ隠せていない。二人の秘密を、簡単に知られてしまう。誰にも知られてはいけないはずなのに。そうしないと藤堂を守ってあげることができないのに。

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