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第948話 別離 13-3

「優哉くんと川端さんの関係がだいぶこじれていて、入院費とか援助を受けたくないからと自宅療養することになったんです」 「え? じゃあいま藤堂は自宅に?」 「うーん、一旦は家に帰るとか、幼馴染みに頼るとか、そんなこと話に上がってたかな」  そういえば何度か見かけたことがある。藤堂の身の回りは片平の母親が仕事上がりにやってきて、色々と面倒を見てくれているようだった。ではいまは家には帰らず片平や三島のところへ行ったのだろうか。 「でも退院後すぐは川端さんに見つかるかもしれないから、別なところにしばらく身を隠すとかも言っていたような」 「別な場所?」 「おそらくホテルとか、そういうところだと思うんですけど」  身を隠さなくてはいけないほどに伯父の川端さんと険悪になっていたなんて、そんなことをまったく知らなかった自分が情けない。上の空になるほど思い悩んでいたのは、父親のことではなく伯父との関係についてだったのだろうか。  母親の協力者である可能性も高いし、なにか気がかりなことがあるとか。養子になるとかならないとか、そういう話もあったからかなり状況が悪いのかもしれない。 「藤堂と連絡をとりたいんですけど知りませんか」 「ちょっとそこまではわからないです。病院への通院や連絡は優哉くん本人に任せてあるみたいなので」 「そうですよね」  身を隠すと言っていたのなら、特別な連絡先があっても病院には知らせないだろう。どこで居場所や連絡先が漏れるとも限らない。現にいまだって内密の話を僕にしてしまっているくらいだ。いまの僕にとってはありがたいことだけれど、こういう軽さを懸念しているのだろう。

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