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第950話 別離 14-1
藤堂の住んでいる町は電車で通り過ぎたことはあるがいままで降りたことはなかった。改札は一つ、それを抜けると北と南に出口が分かれている。駅前はスーパーやコンビニ、商店街などがあり人通りも多いようだ。しかし賑やかという雰囲気ではなくどこか落ち着いた町並みだ。大通りを渡って一歩内に入るとそこから先は住宅地が続く。
駅から五分ほど歩くと白い外壁にオレンジ色の屋根が映える一軒家があった。その家は近所でも目印にされることが多いらしい。表札は三島、その向かいの家は片平だ。そしてここから二、三分くらい歩けば藤堂の家がある。立ち並ぶ家の中で藤堂の表札を見つけると、僕はカーテンが締め切られた窓を見上げた。
「やっぱりもういないか」
チャイムを二回鳴らしてみたがそれに応答はなかった。しばらくその場で待ってみるが、家には明かりがついている様子もないので誰もいないのだろう。
「駅に戻って大人しく片平と三島が帰ってくるのを待つか」
片平と三島のところへは藤堂からの連絡はきていなかったけれど、午前中に藤堂から片平の母親のもとへ着信があったようだ。しかしその時は仕事中で電話を受けられなかったため、用件がなんだったのかそれはわからないままらしい。いまは折り返しの連絡を待っているところだと言う。
電話があったのは十一時頃らしいので、そのくらいの時間に藤堂は病院を出たのだろう。結局藤堂の行方はいまのところ誰も把握していないということだ。なにか手がかりになるものがあればいいのだが。
「藤堂の交友関係は知らないからな」
片平や三島、峰岸など学校の交友関係はなんとなくわかるが、学校の外――プライベートでの人付き合いはまったく聞いていないのでわからない。
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