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第951話 別離 14-2
こんなことになるんだったらもっと色々聞いておけばよかった。傍にいたのに、僕たちはお互いのことをあまりにも知らなすぎる。
まだこれから先に時間はあると、悠長に構えていたのがよくなかったのだろうか。
「あー、駄目だ! 後ろ向きになるな。ちゃんと前を向け」
気を抜いたら心が切なさや寂しさに負けてしまいそうになる。藤堂がいないことが不安でたまらなくなりそうだ。けれど俯いているわけにはいかない。俯いていたら大事なものを見逃してしまいそうだから、前を向いていなければ。
「そうだ、メールだけでも送っておこう」
なにかのタイミングで携帯電話の電源を入れることがあるかもしれない。微かな望みにでもかけて連絡がとれることを願いたい。
「会うのが一番いいんだけど」
直接会ってその目を見ればその心がわかる。本当にそれを望んでいるのか、嘘をついているのか、我慢しているのか。藤堂は正直だから心に思っていることが目に現れる。
「会って抱きしめたいな」
しばらく触れていない気がする。藤堂は会えばいつも抱きしめてくれた。けれど入院してからは少し距離ができてしまった。温かなぬくもりも柔らかな匂いもずっと触れて感じていない。
「けど、寂しがっている場合じゃ」
「うわっ」
無意識に力が入っていたのか、携帯電話を握っていた手を振り上げてしまった。そしてそれと共にその手になにかがぶつかった。その感触とすぐ傍で聞こえた小さな声に驚いて、僕はその場に立ち止まってしまう。
「あれ?」
藤堂の家から駅に向かい歩いていたはずだが、ふと周りを見回して首を傾げてしまった。来た道とは違う見覚えのない道、景色に戸惑う。
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