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第956話 別離 15-3
こんな感情は嫌だと思うのに、僕の中に生まれた独占欲はいつでも藤堂を欲しがる。
「いいよ別に、俺はあれからすぐに振られちゃったよ」
「それってやっぱり、僕のせいなのか?」
「まあ、正直に言えばその通りだね。だけど気にすることないよ。ユウは最初からきっとお兄さんのことが好きだったんだ」
「藤堂がなにか」
「ううん、なにも言わなかった。ただごめんって謝られた。でもいつからなのかは知らないけど、ユウは俺たちと出会った頃からずっと心に誰かいたんだよ。それはみんな気がついてた。でも優しくていい男だったからね。みんなほっとけなかったんだ。誰が一番にユウを落とすかっていつも躍起になってた」
当時を思い起こすかのようにほんの少し遠くを見ながら、ミナトはぽつりぽつりと昔の話を語ってくれた。
当時から一見した容姿よりも大人びた眼差しをする、少しミステリアスな雰囲気を持っていた藤堂。そんな藤堂に周りのみんなは興味津々な様子で最初は近づいたのだという。しかし両手でも足りないくらいの人が熱心に藤堂に声をかけたけれど、しばらくは誰も振り向いてはもらえなかったそうだ。
それから数ヶ月くらいしてからやっと少しずつ応えてくれるようになったが、それでもどんな相手も付き合いが長く続く人はいなかったらしい。
そんな中でも最後まで諦めずに藤堂と付き合ったのがミナトだ。
「まあ、付き合ってたっていうのか正直微妙だけどね。付きまとってたっていうのに近いかも」
「けど一緒に出かけてくれるし、プレゼントだってくれたんじゃないのか」
「うん、無口だし意外と気まぐれだったけど、律儀だったよ。約束すっぽかされることはあったけど、ちゃんとその埋め合わせを言わなくてもしてくれたし、そういえば誕生日プレゼントもくれたな。よく知ってるね」
あの晩、藤堂は駅でミナトを待っていた。きっとあんな風にいつも待ち合わせて、一緒に歩いてたんだろうなと自然に想像できた。落としたライターだって、一目見ただけで彼のものだと気づくくらいだから、贈った本人でなければわからないなにかがあったんだと思う。
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