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第963話 別離 17-2

「え、でも西岡さん付き合って長いんでしょ。それでわからないって」 「いや、僕と藤堂はまだ半年くらいだから」 「は? え? 半年?」  どうやらミナトは僕と藤堂があのあとから付き合っていると勘違いしているようだ。あれからずっと接触がなく、ようやく春に付き合い始めたのだと言ったらミナトは心底驚いた表情を浮かべた。 「そっか順風満帆ってわけじゃなかったんだ」 「悪いことばかりじゃないけど」  辛いばかりじゃない。でも一緒にいられることは幸せだったけれど、春からずっとなにかしらのトラブルに見舞われている気がする。一つが片付けばまた一つと色んなことが起こって、そのたびにあともう少し頑張ればと思ってきた。けど藤堂はどう思っていたんだろう。もう疲れてしまっただろうか。一緒にいるのが疲れてしまったから、だからいなくなってしまったのか。 「西岡さん、あんまり自分のこと追い詰めないほうがいいよ」 「ああ、うん。悪い」  考え込むと思考が後ろ向きになる。藤堂の話を聞くまでは結論を出してはいけない。憶測だけでものを考えては悪いほうにばかり気持ちが傾く。 「まあ、恋人がいなくなったって時に落ち着いてはいられないだろうけど」 「いや、こんな時だから落ち着かなきゃいけないのかもしれない」  焦ったところで答えが出るわけじゃない。それに焦れば焦るほど周りが見えなくなる可能性だってある。藤堂の昔の話を聞いてうろたえていてもなんの解決にもならない。それがなにかの手がかりになるのなら、ちゃんと話を聞かなくてはいけないだろう。 「ミナト、小林さん捕まえて奈智さんの連絡先聞けば? 名刺交換したって言ってた」 「ああ、そっかそうだね。ちょっと電話してみる。西岡さん待ってて」  貴也の言葉に頷いたミナトは、携帯電話を手に取り足早にカウンターの奥にあるスイングドアの向こうへ消えた。

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