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第970話 別離 19-1

 手がかりになりそうなものを手に入れた僕は、ミナトと連絡先を交換して店をあとにすることにした。帰り際にミナトはまたほかになにか情報が入ったら教えてくれると言っていた。しかしいなくなってまだ一日と経っていないから、数日もしたら連絡が来るかもしれないよと慰められてしまった。確かに僕は少し焦り過ぎているのかもしれない。しばらくは身を隠すと言っていたくらいだから、連絡がないのにも訳があると思わなければ気に病み過ぎる。  けれど藤堂のことになると、僕は周りが見えなくなるくらいに取り乱してしまいそうになる。藤堂に依存している――それにはなんとなく気づいていた。それがこんな風に自覚症状が現れるなんて、少し自身を改めないといけない。このままの気持ちで一緒にいたら、近い将来きっと藤堂の負担になってしまう。  藤堂は僕のことを守りたいと思ってくれている。それはわかっているけれど、それに甘えていては駄目だ。お互いが一緒にいることでプラスにならないのならば、一緒にいる意味がないと藤堂に言ったのは僕だ。いま僕たちはプラスになれているだろうか。いや、プラスどころかマイナスな気がする。  これもいい機会だ。これから二人の関係を軌道修正しよう。 「そのためにも会わなくちゃ」  会って目を見て話をして、僕たちはそれからだ。  電話はいまも繋がらないけれど、会いたいとメッセージを送った。すぐ会えなくてもいい、藤堂が会ってもいいと思うまで待つから会いたいと伝えた。このメッセージを見るのが今日なのか、明日なのか、もっと先なのかわからないけれど、伝えないより伝えたほうがいいに決まってる。 「西岡先生!」  携帯電話を上着のポケットにしまったら、通りを挟んだ向こう側から僕を呼ぶ声が聞こえた。

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