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第971話 別離 19-2
ミナトの店を出たあと、貴也に駅まで送ってもらった僕は駅前で人を待っていた。時刻は十八時を過ぎた。駅前に立ち五分ほどだろうか、待ち人が現れる。二人は信号が青に変わると横断歩道の上を駆けてきた。
「西やんお待たせ」
「こちらこそわざわざ悪いな」
僕の前に立ったのは背の高いふわふわな茶色い天然パーマの細目な男子と、小柄な日本人形のようなまっすぐな黒髪が似合う可愛らしい女子。藤堂の幼馴染みでもある三島と片平だ。
学校が終わった二人とすぐに合流するつもりでいたが、ミナトという思わぬ用事ができてしまったのですれ違いになっていた。ミナトの店にいるあいだ連絡がつかなかったのを心配してくれて、電話をしたらわざわざ家から出てきてくれたのだ。
「ねぇねぇ、弥彦。外は寒いから中に入ろう」
「じゃあ駅のところにカフェあるからそこ行こうか。西やんも行こう」
「ああ」
二人のあとをついて行き、駅の構内にあるチェーン展開しているカフェに入る。駅前と言うこともあり混んではいたが、広さはあるので席はいくつか空いていた。その中でもほかと少し離れた隅にある席を片平は見つけ出した。四人掛けの片側、壁際のソファ席に腰を下ろした片平は「カフェオレ」と言うと、肩掛けの鞄から財布を取り出し小銭を三島に差し出す。
「西やんはなにがいい?」
「え? あ、行くよ」
「いいよ、いいよ。まとめたほうが早いし」
当たり前のように片平から差し出された小銭を受け取り、三島は僕を振り返った。それに驚いて首を振ったら、至極優しく笑みを返されてしまう。
「先生、座って待ってなよ」
「ああ、うん。じゃあ、ホットコーヒー。砂糖とミルクはなくていい。これで三人分」
ここで食い下がっても仕方がないので、財布から抜き取った三枚の千円札を三島に差し出した。一瞬目を丸くした三島だったが、すぐに察したのか小さく頷いてお札を受け取った。
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