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第975話 別離 20-2
「そうだあっちゃん。ほら写真に写ってるんじゃないかな、奈智さん」
「え、ほんと! ちょっと待って」
「写真?」
二人のやり取りに思わず首を傾げてしまったが、片平はなにやら慌ただしく鞄に手を入れ中を探っている。そしてしばらくすると厚みのある手帳のようなものを二冊ほど取り出した。
「西岡先生が優哉の親しい人を知らないかって言うから、外に出歩くことが多かった中学の時の写真持ってきた」
「藤堂の知り合いとか写ってるのか?」
手帳のように見えたものは写真のアルバムだったようだ。広げると片平や三島、そして藤堂が写っている。三人は以前見た藤堂と同じ制服を着ていた。
「うん、まあ、えーと。昔の彼氏とか友達っぽい人とか。ノリのいい人はよく私たちとも遊んでくれたんだよね」
「そうなのか。見てもいいか」
「あ、うん」
片平や三島が知る昔の人はどんな人なのだろうかと思っていたが、その頃の藤堂を考えてみればやはりその辺りになるのか。少しばかり言いにくそうに片平は目を伏せたけれど、湧きでそうになった嫉妬心は押し込めて僕はアルバムをゆっくりとめくった。
その中には制服姿の藤堂と私服姿の藤堂がいる。制服姿の時は傍に必ず片平か三島が写っている。私服姿の藤堂の隣では見知らぬ人が笑っていた。さすがにそれを見ると胸が締めつけられるような気分になる。言葉で聞くだけではわからない藤堂の時間がそこにあるのだ。
「西やん、ほらこの人だと思うよ」
「ん?」
もう一冊のアルバムを見ていた三島が開いたページを指さしてきた。それに視線を落とすと藤堂に三島、あともう一人男の人が写っていた。穏やかそうな顔立ちは少し彫りが深く、赤茶色い髪と相まって日本人離れした印象を受ける。
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