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第977話 別離 20-4

 噂だと言っていた貴也の言葉は本当だったのだ。一緒に出歩くほど親しかったのだろうけれど、それだけならばそんなに胸は苦しくならない。 「で、なっちゃん先生が優哉の居場所知ってるの?」 「それはわからないんだ。でも藤堂のことで話がしたいって言ったら会ってくれることになって」 「ふーん、五分五分な感じなのね」  ただ昔話をしたいと思われているのかもしれないし、いまの藤堂を知っていて話をしたいと思っているのかもしれない。実際会ってみなければ相手の真意はわからないのが現状だ。期待外れになるかもしれないが、いまは藁にもすがる思いだ。 「でも私たちが知ってる優哉の知り合いの中で、一番近しい相手なのは間違いないわね」 「あー、でも会えるの二週間も先なんだ」  メモ紙に書かれた日付に気がついたのか三島が声を上げる。その声に片平も視線を落としてメモ紙を見つめて目を細めた。 「ああ、そうなんだ。忙しい人らしくて」  会えるのは今日からちょうど二週間後の夜。指定の店でと言うことになっている。片平と三島を待つあいだに携帯電話で調べたら、自宅の最寄り駅から一駅先に行った場所にある会員制の小料理屋だった。そんな場所を待ち合わせ場所にするくらいだから、平凡な教師の僕などとは違った世界で生活している人なんだろうなと少しばかり緊張している。 「手がかりになる話聞けるといいね」 「まったくあいつはなにやってるんだか」  心配をしているのは僕たちだけではない。このままなんの手がかりや情報がなければ、片平と三島の親が警察に届け出ると言っているようだ。本人の意思で姿を隠しているとしてもまだ藤堂は未成年だ。失踪届を出されても仕方がない。そんな大ごとになる前に居場所がわかればいいのだけれど。  それからしばらく片平と三島と少ないながらも情報交換をして、なにかあればすぐに連絡すると約束し合い別れた。

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