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第979話 別離 21-2
「事件が解決しました」
「え? それはどういう意味ですか?」
まっすぐとこちらを見る野崎さんの視線に僕は状況を飲み込めず固まってしまった。先ほどの二件が片付いたと言うことなのか。
「現場を立ち去った二名と、事件の共犯者とされていた人物を逮捕し身柄を拘束しました」
「共犯者って、藤堂の伯父のことですよね? なにか証拠が出たんですか?」
推測だが藤堂の言っていたことや学校へ届いたメールなどから考えて、藤堂の母親の共犯者は伯父の川端だろうと思っていた。けれど彼は直接すべての事案に手を下すことはしていない。捕まったという二人も口を割るとは思えないのだが、どういうことなのだろう。
「そうです。捕まえたのは川端雅明。貿易商社の会長をしていて、表向きは支援団体や学校法人に寄付を行っている慈善家です」
険しい顔をしている野崎さんの横で、上機嫌な様子で笑みを浮かべる館山さんが両拳を握り、嬉々として話し始めた。その様子にますます眉間のしわが深くなった野崎さんだったが、口を引き結び押し黙る。自分が語るよりも早いと思ったのだろうか。
「しかし実情は金品を送る代わりに機密情報などを得て、それを裏で売買したり、情報操作したりしていたんですよ。取り引き相手は政治家や公共団体、会社役員など。贈賄罪、インサイダー取り引きにも接触しています」
「すみません、難しくてよく理解できてないのですが、別件逮捕ですか?」
ニュースや新聞でなに気なく見聞きしたことのある罪名だが、いざそれについて詳しく語れと言われると難しい。
「犯罪教唆、ほう助についてはこれから突き詰めていきます」
突然のことに頭がついていかない。要するに僕たちの事件で捕まえるには証拠が足りなかったと言うことか。しかしこの別件逮捕は館山さんの口ぶりだと最初からそのつもりだったのかもしれない。以前言っていた、犯人に近づいているというのはこのことだったのだろう。
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