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第981話 別離 21-4
裏でどんな取り引きが行われていたかまではわからないが、生徒たちに悪影響が出ないのならばそれでいい。取り引き相手が捕まったとなれば、それ以上なにかを企むこともないだろう。
「これで全部終わったことになるんでしょうか」
「そうですね、形だけですが」
全部が終わったのだとしてもすべてが元通りになるわけではない。これから先どうなるのかまだわからないことだらけだ。藤堂はこの結末を知ったら帰ってくるだろうか。これでもう藤堂が伯父に振り回されることもなくなるのならいいのだが。
「職場には、復帰できそうですか?」
「あ、いまのところまだわかりません」
ふいに問いかけられた言葉で、自分自身も宙ぶらりんであることに気がついた。言葉を濁して苦笑いを返したら、野崎さんは「そうですか」と困ったように目を伏せた。もしかしたら学校で僕が学校に登校できない理由を聞いたのかもしれない。
「あの、野崎さんや館山さんのせいで学校に行けなくなったと言うことではないので、大丈夫ですよ。僕が選択した結果です」
「その選択を後悔は?」
「していません。藤堂のことが好きになれて、一緒にいられて本当に幸せです。だからこの先も、一緒にいたいと思っています」
藤堂を選んだことを後悔するはずがない。寂しい辛い切ない思いをしたって、一緒にいる時の幸福感に変えられるものはない。離れてそれは余計に感じた。いくら考えても思い出すのは楽しかったこと、藤堂の笑顔だ。
「そうですか」
野崎さんは僕と藤堂の関係を気にしていたけれど、こういった現実的な問題を気にしていたのかもしれない。
はっきりしない僕を見て、その曖昧な態度が弊害になるんじゃないかと危惧していたのだろう。だからきっと僕たちの関係をしっかり認めさせたかった。いま思うとそんな気がする。
野崎さんの眼差しをまっすぐに見つめ返すと、小さく息をつく。けれどその目に呆れなどはなくて、ほんの少し笑みが浮かんで見えた。
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