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第987話 別離 23-2

 早く着いたら時間をどこかでつぶせばいい。そう思いながら部屋をあとにすると、僕は足早に玄関に向かう。 「やっぱり少し気持ちが急いているのかな」  無意識に足を速めていることに気づき思わず苦笑いしてしまう。  電話が来たあの日からずっと、藤堂のことが気がかりで、毎日気がつけば携帯電話を手にして電話をかけていた。そしてどこかでタイミングよく繋がったらいいな、なんて思いながら聞き飽きたアナウンスにため息をついた。  そんな毎日が早く終わればいいと心の中でずっと思っていたから、その気持ちが先へ先へと思いをはやらせるのだろう。 「荻野さん、藤堂の居場所を知ってるといいな」  僕ではないほかの誰かを頼って身を寄せているのだとしたら、それは正直言ってかなり癪だ。けれどいまはそれでもいいと思えてしまうくらいに藤堂に会いたい。会えるのならその気に入らない部分は飲み込んでしまってもいい。ひねくれた考えだけれどそのくらいもう藤堂が足りない。  たかが二週間、連絡がつかないだけなのに、会いたくてたまらない。 「あ、外もうだいぶ寒いな」  玄関扉を開けたら冷たい風が吹きつけた。そういえば暦はもう十二月になっていた。今年もあとわずかかと思うと時間の流れを感じてしまう。  藤堂は学校を一ヶ月以上も休んでしまったが大丈夫だろうか。元々成績もいいしそんなに心配しなくてもいいのかもしれないが、冬休みの前には学校に復帰できればいいなと思う。試験だけでもしっかりと受ければきっと卒業は問題ないはずだ。 「卒業式は見られるかな」  できれば藤堂の卒業式を見たいなと思うけれど、いつ学校に復帰できるかもわからないのが現状だ。付き合っている相手が藤堂だと知れたら、卒業するまで学校には行けないかもしれない。でもまあ、藤堂が卒業できるのならそのくらいは我慢できる。

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