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第1025話 別離 32-2

「本当に馬鹿だなお前は。極端なんだよ。ほら、こうして繋いでる手だって、離れても心でちゃんと繋がってる。僕たちはいつだって一緒だよ」 「佐樹さんは寂しくないですか?」 「馬鹿! 寂しいに決まってるだろう。寂しくて仕方がないよ。だけどお前が帰ってくるって信じてるから待っていられるんだ。お前も僕が待っていると思って頑張れ」  涙で濡れた頬を包み込んで引き寄せる。そしてもう一度唇を重ねれば、伸ばされた腕に抱きすくめられた。少し強いくらいの抱擁に安堵した気持ちになる。愛おしいこの男は自分のものなのだという安心感。腕を伸ばして首元に絡めると僕も強く藤堂を抱きしめ返した。 「藤堂、僕はお前を許してはいるけど、怒ってるぞ」 「……すみません」 「藤堂の考えることは僕のことを一番に想ってくれているけど、僕の気持ちを無視してる。お前の決めたことが間違いだとは思わないけど、僕のことを想うなら僕の気持ちも想像してくれ。お前が僕を想うように、僕もお前を想ってる」  藤堂はまだまだ心が未熟だ。大人の中で振り回されて、自分のことを考えるだけでも精一杯なのかもしれない。だけどこれからは離れてしまうのだから、僕が傍で補ってあげることもできない。 「なんでも自分で解決するな。人を頼る癖をつけろ。お前は一人で生きてるわけじゃない。お前のこと心配してる人はたくさんいるんだ」 「佐樹さん」 「僕に謝るな。謝るならほかのみんなにだ」  藤堂のことを想っている人は想像するよりも多いんだってこと、彼は知らなきゃいけない。知ってそのありがたみをもっと感じなくちゃ駄目だ。 「これからたくさん経験をして、色んな人に出会って、お前は成長していかなくちゃいけないんだ。お前の世界にいるのは僕だけじゃない。もっと広くちゃんと見渡すんだ」  新しい世界は藤堂にどんな変化をもたらすだろうか。まったく新しい場所に行くのだから、藤堂の世界を大きく塗り替えてくれるくらいの変化だといいなと思う。

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