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第1029話 別離 33-2

 両手で僕を囲い、まっすぐと僕を見下ろす藤堂の視線に頬が熱くなった。じわじわ広がる熱は耳まで広がっていく。でも逃げ出す気にはならなくて、先をねだるように目の前の唇を引き寄せる。するとそれに応えるように再び舌先が唇をなぞっていく。 「佐樹さん、愛してる」 「うん」  角砂糖みたいに甘ったるい口づけが心を満たしていく。混ざり合う唾液すらまるで媚薬のようで、奥底まで触れて欲しくてたまらなくなる。腕を伸ばして藤堂を抱き寄せて、求めるように舌先を伸ばした。絡み合うそれは熱くて身体までじんと火照るような気がする。 「あ、待って……脱ぐ」 「いいですよ」 「よくない、なんかこれじゃ格好つかない」  コートのボタンに手をかけた藤堂の手を慌てて止めると、僕は急いで身体を起こし立ち上がる。そして自分の格好を見て思わず苦笑してしまった。部屋についてからずっとコートを着たまま鞄もかけたまま、これでは少しばかり色気にかける気がする。  不服そうな顔でベッドの端に腰掛けた藤堂の口先に口づけると、僕は鞄を下ろしコートのボタンを外した。そして中に着ていたジャケットのボタンも外して、まとめて脱いで床に放った。 「佐樹さんこっち来て」 「待って、まだ」  腕を伸ばし僕を引き寄せようとする藤堂から逃れると、僕はシャツのボタンに手をかけながらそれをスラックスから引き抜く。そして一つひとつと指先でボタンを外し、一番下までたどり着くと肩を脱いでゆっくりとシャツを下ろした。  素肌が外気に触れる感覚に肌がざわめく。けれどまっすぐに藤堂に見つめられていると思うと、身体の内は熱くなってくる。緩慢とも言えるほどの動きで袖から腕を引き抜けば、はらりとシャツは床に落ちて広がった。 「佐樹さん」  さらに靴を脱ぎ捨て素足になると、ゆっくりと藤堂に近づきながらウエストのボタンを外す。けれどファスナーを下ろし、スラックスに指をかけたところで藤堂の手に捕まった。

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